彼と彼女


BY. 羽条 千聖  2000.JUNE.





『私と仕事、どっちが大事なの?』

良くドラマとかで耳にする言葉。
大抵の男は、ここで、少し迷うのよ。
その時点でもう失格。
きっと、そう言う男の中では
【ここで、お前って言ったら、嘘つきって言うんだろうし、仕事って言ったら別れるとか言うんだろう な。】
なんて、そんな策略が巡らされているはずだもの。
なんて、打算的。
だから、この質問には、答えなんて無いの。
難問だと思わない?
時と、場所と、聞く人と。
それによって正しい答えが変わってくるのよ。
だから、聞く方も相当の覚悟が居るの。
私も聞いてみたいの。
でも、やっぱり怖いのよ。

私の答えはね。
『私』を選んでも、『仕事』を選んでも、『沈黙』も、『両方』も。
全部ダメなの。
私も、どれが正解かわからないの。
貴方の答えを聞いて。
それから、正解を考えるの。

そんな話を祇孔にしたら。
「先生らしいぜ。」って笑った。
そして、聞きたいけど怖いって行った私に
「代わりに聞いてやろうか?」っていった。
私はつい、うんって答えた。

「なァ。『私と仕事どっちが大事なのよ』とか言われたら、お前はなんて先生に言ってやるんだ?」
「何です、突然。」
当然の如く。
御門は訝しげな顔をしたらしい。
想像に難くなくって、私は笑った。
「まァ、今のお前なら先生を選ぶんじゃねェのか?」
「『仕事』ですね。」
御門はそう答えたんだって。
まぁ、想像してた答えだけどね。
予想に違わぬ回答有り難うってとこかな。
・・・少しは迷って欲しかったけど。
「は?なんで?」
祇孔は驚いて訪ねたそう。
やっぱり、少しは迷うだろうと読んでいたからみたい。
「・・・そんなこと聞いてどうするつもりです?」
勘の良い御門のことだから、きっと、気がついたのかも知れない。
でも。
「まァ、良いでしょう。私が彼女を選ばなかったのは・・・。」

「彼女を愛しているからです。」

それを聞いたとき、ホントにそんな事言ったの?って思わず祇孔に聞き返しちゃったわよ。
「臆面もなくな。・・・で。」
「私が彼女を選んだとします。そうしたら、私と彼女に残るものは、不確かで、不確実。そんな将来だ けです。」
「そして、私が仕事を選べば。私には、彼女と、彼女を養う力が手にはいるのですよ。」
「は?なん で、先生が残るんだ?」
やっぱり、御門の言うことはいまいち難しい。
「ですから。たとえ、私が『仕事』を選んだとしても、彼女は他の何を捨てても私を選ぶでしょう?」
「・・・自信過剰だな。」
「当然です。」
私はその話を聞いたとき、思わず笑った。
『自信過剰だね』って。
でも。
『きっとその通りだね』って。
そしたら、祇孔は苦笑いして。
「案外、お前ら似たもの同士かもな。」
って言った。

私の彼は、私を良く理解しているわ。


Copyright(c) 羽条 千聖 All rights reserved





きり番を踏んで、リクエストさせていただいた御門×女主ちゃんのお話です〜!
くぅ〜! やっぱり御門、イカス! 自信たっぷり! こうでなくては、ですよねえ。
ちなみに、うちの御門も即答で「仕事」という男ですな。(^_^;;)
その理由はいささか違うっていうかやせ我慢してるところがなきにしもあらずですが。
ああ、しかし、私もこういうラブラブな御門×女主ちゃんが書けないものかしら。
何にしても、こんな素敵なお話いただけてシアワセな私です。




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