■Eyes on me〜あなたの瞳は、どうして動きを止めないの?
■ エルスさま
今日も、私は彼の隣を飛んでいる。
そして、いろいろなところにいっしょに行く。彼の見るものを私も追って、彼が笑うと私も嬉しくなる。
天使にとって、この想いは危険なもの。でも、そう割り切れるのであれば、初めから私はこんなに苦しむことはない。
(シーヴァス……)
私の勇者。長い金の髪は、きっと絹糸のようだろう。触れてみたい。それが叶うのなら、どんなに幸せなことだろう。
シーヴァスは、今とある貴族の夜会に出ている。いつでもそうだが、私は宴の中で笑っている彼を見るのが、とてもつらい。彼のハシバミ色の瞳は、饗宴の間ずっと私を映さないから。彼が見るのは、美しく着飾った人間の乙女たち。彼の二つの輝きの中で、誰かが笑う。誰かの二つの鏡の中で、彼が笑う。私はそれに……耐えられない。
華やかな場所から抜け出して、私はシーヴァスを待つことにした。広い中庭の噴水に腰かけ、ため息を一つ。
(シーヴァスには……私はどんな風に見えているんだろう)
私が、彼と過ごしてきた女性たちと比べて特別なのは、この背中の両翼だけだ。もしもこの羽がなかったら、私はきっとあの綺麗な女性たちには太刀打ちできない。
「ルーナ?」
物思いにふけっていたところを、不意に現実に引き戻された。……シーヴァスの声によって。
私は驚いて、思わず立ち上がっていた。
「あ、あの、どうしたんですか?」
自分の声が上ずっていないかどうか、それさえもわからなかった。シーヴァスが、私を見つめているから。私だけを。
甘い呪縛のせいで、言葉が出てこない。私は、ただただ気圧されないように、彼の目を見返しているだけで精一杯だった。
ハシバミ色の彼の瞳の中に、私が映っている。何度梳いても癖が取れない褐色の短い髪も、くすんだような暗緑色の目も、どうしてこの輝きの中では美しいと思えるのだろう。
「そろそろ帰ろうかと思ったのだが、君の姿が見えないのでな。何も言わずにいなくなるはずはないと思ったから、探していた」
「あ……。ごめんなさい、シーヴァス。では、行きましょうか」
このとき、私は信じられないほど和んだ気持ちで微笑むことができた。
たとえ一瞬でも、彼の瞳の中に私だけが存在していたことが、言い表せないほどに幸せだったから。
今、私は翼を捨てた。人の乙女として、彼の傍らにいつづけることを選んだのだ。
彼が、微笑んでいる。私の瞳の中で。
そして私も、私を見つめる彼の瞳の中で、微笑んでいくのだ。
きっとそれは、いつまでも変わらない。
あとがき
いつもいつも、思いつきで書くなぁ私……(^^;)。
タイトルからわかると思いますが、例のあの歌を聴きながら書きました。好きなんですあれ。んでもって、誰のイメージかと考えながら聴いていると、なんと、全員にぴったりしてしまうんです(^^;;)。それで、私情によってシーヴァスにしました。今回の天使は、自分にコンプレックスを持っている、私のところの子です。