■真昼の星■ 猫まねきさま
ん、なぁに? マリエル。
え? 「お母様はお父様の何処が好きで結婚したの?」 …ですって?
マリエルはお父様の事嫌いなの?
そうよね、あんなに優しいお父様ですものね。
そうねぇ。…今日は昔話をしてあげましょうか。
昔…お母様が天使だった事はマリエルにも話したわよね。
このインフォスという世界を救ってもらう為に、お父様に勇者として働いてもらった事も。
でもね、最初は、お父様の事、嫌いだったわ。
女と言う女の方なら誰にでも優しくて、女の方の気持ちを考えないで軽い恋を楽しんでいた人だと思っていたから…。
お父様は常に自分をごまかして嘘をつきつづけてきた人だと思っていたから。
お母様が選んだ勇者の中で、一番愛や誠実な思いを強く求めてきていたくせに自分からは何も働きかけようとしない甘えていた人だと思っていたから…。
お母様は、お父様のそんな面が凄く嫌いだったわ。
え? じゃあなんでそんなお父様と結婚して、私がいるのかって?
それはね、こんなことがあったからなのよ…。
お母様が天使としての役目を果たそうと、お父様の事を…少しでも理解しようとして天界から地上に降りて、勇者としてのお父様に同行した時、舞踏会に誘われたの。
当然、注目の的だったわ。
いろんな男の方からもダンスを申し込まれ、楽しくみんなと踊っていたわ。私も。
お父様が女の人の注目を一心に惹きつける人だったから、最初はそのせいで私も注目されていると思ったわ。
けれど…違った。
彼らは…お母様の背の高さを…身体の大きさを笑っていたの。
お父様には似合わないって。
充分身長の高いお父様より、更に頭一つ分背が高かったお母様も、お父様には似合わないと思っていたから、その陰口を偶然、テラスの入り口で聞いていた時にはまだ耐えられたわ。
だけど、その後…
「今宵は面白い見世物をどうもありがとう」
…って、パーティに招待されていた男性がお父様に話し掛け、まわりがどっと笑い出したの。
お母様…ショックで泣きそうになった。
その時だったわ。
お父様がその男性に向かって手袋を投げ付けながらこう言ったの。
「私のパートナーを侮辱する発言だけは控えてもらおう」
…ってね。
そして、私をそのままダンスに誘い、中央で二人きりで踊ってくれたの…。
体格の差を気にして臆病になっていたお母様に対して、
「あんな中傷など気にするな。君はだれよりも美しいのだから」
…って、そう言って踊ってくれたの。
その時はお母様もかなり驚いたわ。
いつもは大女といってお母様のことを小馬鹿にしていたお父様自身が、相手に対して手袋を投げ付けるほどに怒ってくれた事が…。
驚くと同時に嬉しかったのよ。お母様は。
なのに、お母様は、その時のお父様が何時も使う文句に負けたくなくて、素直になれなくてこう言ったの。
「何時も女の人をそうやって口説くんでしょ。誰にでも…!!」
そうしたら、お父様は、傷付いた目をして「君までそう言うんだね…」って言って、笑うだけだったの。
少しくすんだ榛色のその瞳をみて、はじめてお母様は自分の間違いに気付いたの。
お母様まで、曇った目でお父様のことを見ていたのかも知れないって。
自分の間違いに気付いたお母様は…、即座にそのことを謝ったわ。
そうしたら、お父様は優しく頭を撫でて、笑ってくださったのよ。
ねぇ、マリエル。
昼間にお星様が出ないのは何故か分かる?
お日さまの光が空気の中に含まれている様々な色を映して、お星様の光を隠してしまうからなのよ。
お父様にも…、それが言えたの。
お父様はいつも真剣に女の人を愛しているのに、「誰にでも優しい」というお日さまの光が、「自分以外の女の人にもやさしいのではないか?」という疑いをもった大気の色に惑わされてしまって、お父様の心にあるとても綺麗な星の光を隠してしまっていたのよ。
それに気付いてから、お母様はいろいろお父様に対する見方を変えてみたの。
そうするとね、いろいろなことが見えてきたのよ。
お父様が本当はとても子供のように傷付きやすい、ナイーブな心を持った人だったんだなって。
その心を守る為に、その心に軽薄と言う鎧をつけていなければ、生きていられないほどに弱い人だったんだなって。
早くにおじい様たちと離れ離れにさせられてしまって、ひいおじい様に引き取られたお父様は、一見華やかそうに見えるこの世界に、剥き身のまま放りこまれ、いろんな人の悪意という刃に傷つけられていた人だったんだって。
でも、お父様は、あの舞踏会の時に言われた言葉のあまりのひどさに私が逃げ出し、怒り出したくなってしまった事に対して、きちんと立ち向かい、怒ってくれた。
人の悪意に傷つけられながらも、決してそれにめげる事無く、その胸に輝いていた誰よりも強い星の光を守り通していた人なのよ。あなたのお父様は。
お母様は、お父様のそんなところが、好きになったわ。
お母様は、お父様のそんなところを守ってあげたくなった。
他の誰が分からなくても、私だけはそれを分かってあげられる人でいたいと、お母様は思ったのよ。
だから、お母様は全ての任務が終わったあとでも、お父様の元に残りたいと思ったのよ。
マリエル…貴女のお父様は、このインフォスで、誰よりも強い勇者だったのよ。
貴女は、そのことを、誇りに思ってくれるわね…?
そう…誇りにおもってくれるの? いい子ね。
さあ、昔話はこれでおしまい。
もう、ダンスの時間ですよ。執事が呼んでいるわ。
貴女も、いろんなことをお勉強して、お父様に負けない素敵な人を見つけるのよ。
私達は何時までも貴女の幸せを守り通して見せるから…。
■後書きと言う名の独り言。
………………………………………………………………玉砕、粉砕、粉微塵っ!
うがぁぁぁぁぁぁっ、どうしてこう、シーヴァスになると天使と勇者の恋物語がかけなくなるのっ。私っ!!
オンリーイベントとかに行けない不満をある所で訴え、「フェイバの同人誌が欲しい」と唸っていたら…、なんと優しい森生様が家に自分の作った同人誌を家まで送ってきて下さったんです!!
あまりに嬉しくて、そのお礼にと、森生さまの大好きなシーヴァスの話を書き始めようとしたのですが…、遅々として筆が進まない。
それを解消してくださったのが、森生様のところに「おとぎ話…」を送りつけた時にその感想メールをいただいた事がご縁ではじまったある方とのメールのやり取りからでした。
そして、「お礼に創作送ります〜」って、森生さまにメールを送ったらその返事の中に「猫まねきさんのシーヴァスを楽しみにしています。」って言葉があって、それで一気にこの話が出来あがりました。
1日で書く事が出来たとても短いお話です。
でも、これ、共感できる人…きっといてくれるって信じてます。
甘々というよりはほのぼののろけ…というようなお話に仕上がって、当人が一向に出てきませんが許してください。(汗)
かっこいいシーヴァスって、書いてみたかったのにな(苦笑)
でも、こう言う見方もあるんだと言う事で…(爆)
だぁぁぁぁぁっしゅっ!!(猫まねきは逃走した)
猫まねきより